第九節 カハールのドグマを塗り替える神経幹細胞治療の司令塔(最終回)

慶應義塾大学再生医療リサーチセンター、岡野栄之教授についてより深く知って頂くために、彼のこれまでの研究人生(肖像)について、ドキュメンタリー形式のシリーズで綴らせて頂こうと思います。

第九節 カハールのドグマを塗り替える神経幹細胞治療の司令塔(最終回)

岡野氏には、慶應義塾大学に戻ってきたときに立てた目標がある。
「中枢神経系を蘇らせる三つの目標です」

第一に「神経軸索の活性化」。切断または損傷された神経軸索(線維) の再生を促し、阻害物質を阻む。創薬が担う領域である。

第二に「神経細胞の補充」。ニューロンには新生能力が乏しいため幹細胞を移植する。これはiPS細胞が担う。

第三に「リハビリ」であり、高齢者医療との臨床連携である。

普遍的な発見「Musashi」を基盤にして、活性化と補充と臨床の全方位で実績を上げる、それがカハールのドグマを塗り替えるための岡野氏の戦略である。Musashiやコモンマーモセットはもとより、iPS細胞も新薬もAIも、全ては神経再生のための武器なのだ。

日本で、そして世界で”神経幹細胞治療の司令塔”となった岡野氏が、次に解明を目指しているものは何だろうか?

「それはやはり『What is Life?』です」

シュレーディンガーは、生命とは物理法則に支配されていると語った。

岡野氏に生命とは何か?と問うと何と答えるだろうか。永遠の科学少年の目を輝かせて、きっとこう言うだろう。

「そんなこと分かってたまるか!」

分かってもいないのに、分かったつもりにならない。

分からないから探究するのだ、分からないから楽しみ、あれほど苦しんできたのだと。

岡野氏の内にある”科学者魂の胚”は、覚悟や憧れで発現し、挑戦で分裂し、人類のために新生し続けていく。

(完)

これまで長らく、本肖像ブログにお付き合いいただき、誠に有難うございました。

                          【ドクターズマガジン2021年8月号】より

                                    全文はこちらから

 

投稿者プロフィール

Satoru Morimoto
Satoru MorimotoProject Associate Professor
Satoru Morimoto, M.D., Ph.D. 
Keio University Regenerative Medicine Research Center (KRM)
Project associate professorResearch Gate Building TONOMACHI 2, 4B, 3-25-10, Tonomachi, Kawasaki-ku, Kawasaki-shi, Kanagawa,
210-0821, Japan