最も便利な試薬、それは・・・

東大医科研の加藤哲久です。「私のちょっとした実験ハック」というお題を頂き、真っ先に思いついたのは、「シークエンス解析によるジェノタイピング」でした。ウイルスを研究対象とする私の所属研究室では、遺伝子組換えウイルスを、せっせと作出して、その性状解析を繰り返しております。余談ではありますが、自分達としては、遺伝子組換えウイルス作出は、日常そのものなので何も感じませんが、あまりにも大量のウイルスを作出する我々は少し変わっていると同業者からも思われているようです。そんなこんなで、我々は、ウイルスのモルキュラークローン(大きなプラスミド と思ってください)に目的の変異が導入されているのか、大量のシークエンス解析をしています。通常ですと、① ウイルス感染細胞から、DNAを抽出する、② 抽出したDNAを鋳型にPCR反応を実施し、PCR産物を精製する。③ シークエンサー・メーカーのプロトコールに従って、精製PCR産物をシークエンス反応し、キャピラリーシークエンサーに供するという流れとなります。意外と、時間とお金がかかるかと思います。今回は、①のDNA抽出、②のPCR産物精製を、一瞬で終わらせるローコストな試薬をご紹介させて頂きます。

プロトコールは以下です。

① ウイルス感染細胞の上清を「???」で10倍希釈する。←超高速!!

②「???」で希釈した培養液を鋳型にPCRする

③ PCR産物を、「???」で40倍希釈する。←超高速!!

④ 通常プロトコールの25倍量のオリゴを用いて、「???」で希釈したPCR産物をシークエンス反応し、キャピラリーシークエンサーに供する

「???」、お分かりでしょうか? 答えは、「超純水」です。①と②は、一般的な遺伝子工学をされている皆様はご利用の機会がないかと思いますが、③と④は皆様のお役にたてるプロトコールなのはないでしょうか?上手くいくと信じていますが、もし上手くいかなかったら、班会議で相談してみてください。

(もうNGSの時代なので、キャピラリー・シークエンスなんてしないよ〜という声も聞こえてきそうですが。。。)