N末
タンパク質のN末にもドラマが展開する。AUG = Metではあるが、Metそのものにはあまり意味はなく、多くの場合除去される。タンパク質によっては2nd アミノ酸も除去され、おまけにアミノ末端がアセチル化される。beta-アクチンはN末がアセチル化されなかった場合アルギニンが付加され、繊維化に影響を与えるとされている。このN末の攻防を試験管内で研究するために我々は再構成翻訳系を利用している。そこで不可欠なのが、PSIVやCrPVといった昆虫ウイルスのIRESである。これらのIRESにおいては1 stアミノ酸がA-siteから始まるため、どのアミノ酸からでも、例えばアルギニンから始まるタンパク質をデザインすることができる。この非Met開始IRESを発見したのが中島信彦先生(農業・食品産業技術総合研究機構)で、これは常識を覆す2000年初頭の成果である(PNAS 2000, 97: 1512)。
今高寛晃 兵庫県立大学