生化学会・Tokyo RNA Club近づいてまいりました(1)
冬といえば分生。分生といえば海外研究者との交流の場。というのが通年行事でしたが、今年は一足早く生化学会で領域関連の国際シンポジウム「A new era of “soft” biopolymers ~ しなやかな生体高分子の新時代」が11/11に名古屋国際会議場で開催されます。そしてこれまたいつものコバンザメmeeting、生化学会に集う関連海外研究者せっかくだから一緒に集まりましょうよのTokyo RNA Clubも東大の駒場キャンパスで開催されます。というわけで、本領域でお呼びした海外ゲストお二人のご紹介です。
まず一人目はAlex Holehouseさん。ホームページはこちらです。
あれ、どこかで目にしたことがある名前、、という方も多いのではないかと思いますが、そう、隔週でIDP (intrinsically disordered protein) 関連の最新のお話が聞けるオンラインミーティング、IDP seminarsをオーガナイズされてる、あのAlexさんです。コロナ騒ぎで海外出張もままならなかったこの2年。海外の最新情報から完全に遮断されてしまいかねない危機的状況の中、誰でも参加できるウェビナーのおかげで地球の裏側からリアルタイムにディスカッションが聞けたのは本当に有り難かったです。とはいえ深夜の2時開始ということで、その時間に起きられた or 寝落ちしなかった時限定ではありましたが。IDPの性質が散在する芳香族アミノ酸の分布で決められているという2020年のScienceの論文のco-first authorとしても名高いAlexさん。IDR/LLPS関連の先駆者のお一人、Rohit Papuさんのところでところでポスドクをされたあと、最近独立されて矢継ぎ早に論文を発表されています。Alexさんの基本的なバックグラウンドはバイオインフォマティックスで、IDP予測プログラムであるMetapredictなど作られていて実際にツールとして使われている方もおられるかもしれませんが、その真骨頂は配列予測と実験的検証を組み合わせた重厚なサイエンス。特におすすめの論文はbioRxivで公開されているこの論文です。
一般にIDPの配列は多様性に富んでいて保存性が低く、その一次配列から機能を予測することが困難であることが知られています。とはいえ、アミノ酸配列が機能を発揮するための何かしらの「文法」が存在するはずであり、それを明らかにすることは本領域の重要なテーマの一つであるわけですが、その問題に真正面から取り組んだのがこの論文で、Abf1というクロマチン制御因子を例に、その重要な機能ドメインである天然変性領域の配列の法則をこれでもかこれでもかと美しい酵母の分子遺伝学を用いて証明しています。ざっくりいうと、天然変性領域の機能は多価の相互作用を仲介する「コンテクスト」としての結合力とローカルな機能モチーフが仲介する結合力の両方の総和によって決められているというお話なのですが、えっ、えっ、次どうなるの、でどうなるのと、ドキドキしながらページを繰っているとすっかり時を忘れて会議に遅れるタイプの珠玉論文です。こういった論文を出版前に目にすることができるというのはまさにbioRxivさまさまなわけですが、こういう形でアイデアを共有することができ、やろうと思えば結果を検証することもでき、さらにアイデアの提唱者にコンタクトしてささやかな敬意を示すこともできるのであれば、peer reviewの論文って何なんだろうという気もしてきます。そもそもサイエンスというのは社会に実装されなければ一部の人間の共同幻想みたいなところがあるかとは思いますが、それを支え、一定の権威づけを与えてきた、僕らが「論文」という言葉で呼んでいるところの発表形態は、20年後、いや10年後には、全く違ったものになっているような気もします。
話が逸れてしまいましたが、Alexさん、生化学会だけでなくTokyo RNA Clubでも発表されますので、天然変性タンパク質の機能解析をされている近隣の方、face-to-faceの交流ができる機会をお見逃しなく!ホームページのプロファイルにある、趣味は “playing ultimate frisbee and cooking for my hungry, hungry wife.” というのも地味に見逃せません。なお、Tokyo RNA Clubは会場の関係で事前に人数を把握しておく必要があ理、こちらのフォームから事前登録をお願いします。参加費はもちろん無料です!
ちょっと長くなってしまったのでStephanie Moonさんは次回ということで、、、
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