プラスミドDNA作成を効率化
理化学研究所の持田です。
細胞を使った研究の場合、遺伝子を発現させるためのプラスミドDNAを構築・作成するのは必須の作業かと思います。しかしながら、あくまでプラスミド作成は研究を進める上での過程の作業ですので、本格的な実験・解析に時間を割くためにも効率化を図りたいものです。私は研究の性質上プラスミドを作る機会が多いこともあり(私自身の横着な性格もあり…)、楽をしようと行きついたいくつかの「実験ハック」をご紹介させて下さい。
私の場合、古典的なLigationによるサブクローニングや、3つ以上の断片を結合できるIn-FusionあるいはGibson Assembly法を用いて目的とするプラスミドを作成することが多いのですが、制限酵素処理産物かPCR産物かに関わらず、基本的に使用するすべてのDNA断片をアガロースゲル電気泳動して、目的のバンドを切り出し・精製してから混ぜるようにしています(DNA断片が非常に小さい場合だけはカラム精製の際にロスしてしまうので例外です)。精製の手間はかかりますが、コロニーPCRなどの事前確認を省けるほどには成功率が上がります。In-Fusion法の場合、DNA断片4つまでは殆ど問題なく結合できています。うまく行かない場合は、そもそものデザインにミスがあったり、PCR産物がきれいに増えていないケースが殆どです。
ただDNA断片の数が増えてくると、その分DNA精製の手間もコストも増えてしまいます。そこでカラム精製の前に、アガロースゲル溶解液の状態で、結合させるDNA断片同士を混ぜてしまっています(混ぜる量比はDNAの量を見て、適宜変えています)。作成するプラスミド1つあたり、1本の精製カラムで済むので、カラムも節約できますし、作業も楽になります。
またDNAのカラム精製や、大腸菌からのプラスミド精製(ミニプレップ)には、廃液回収トレーがついたローターラック (TOMY社、TR015-SC18)が便利です(回し者ではありません!)。
カラムをセットして遠心すると、フロースルーがそのまま廃液入れに回収される優れものなので、ウォッシュのたびに1本ずつカラムを外して廃液を捨ててという作業が不要になります。カラムを直接ローターラックにセットするのは少し抵抗があるので、キャップレスチューブの底に穴を開けたものを間にかませています。
興味のある方はお試しいただければ幸いです