続・4.5SHは蜜の味(2) なかなかどうしてSNS
聖地パシフィコ横浜。これまでも偶然の廊下の出会いでいろいろとお世話になった分子生物学会ですが、2016年の12月は、まさに僕にとって人生の一大転機でした。
そのとき何があったかはしつこいぐらいにこれまで喧伝してきたので端折りますが、すごいんですiGONAD法。ゲノム編集関連のセッションでの東海大の大塚正人さんのiGONADの発表。CRISPR-Cas9とssODNを卵管にインジェクションして、エレポするだけ。生殖工学の魔法のような諸技術(IVFやら前核インジェクションやら精管結紮偽妊娠やら卵管トランスファーやら)のすべてすっ飛ばしてゲノム編集マウスの作製が可能という発表を聞いて、もう居ても立ってもいられなくなるような心持ちでした。インジェクション&エレクトロポレーションは、ニワトリ屋にとっては息をするように手が動く普段使いの実験です。別件の懇談会があったためセッション後にお話はできなかったのですが、そそくさとホテルに戻って興奮冷めやらぬまま早速大塚さんにメールでコンタクトを取ったところ、マウス操作に関してはド素人の僕に一度ならず二度も講習会をセットアップしてくださり、その後も色々アドバイスを頂いたおかげで、年度末の3月には北大でもゲノム編集マウスをさくさく作ることができるようになりました。
そして満を持して4.5SHのノックアウトマウスを自前で作ったところ、、、
と言いたいところなのですが、実は今回のマウスはiGONADで作ったわけではありません。iGONADのおかげでバクテリアのトランスフォーメーション並の手軽さで変異マウスが作れるようになったのは事実で、諦めていた変異マウスの作製をむしろこれまでよりハイペースで北大で進めているのはそうなのですが、それらのラインに関してはまだもう少し論文にするには時間がかかりそうです。大塚さん、スイマセン。。。
マウス諦めた -> iGONADでもう一度やり直そうよ僕たち -> の次なるドミノ倒し。このきっかけは、2013年に遡ります。当時、シマシマ近藤滋さんが企画された文化祭イベント、もとい、ガチ理論というフォーラム企画が分子生物学会でありまして、僕は、その裏方でtwitter係を承っていました。研究にまつわる様々な屈託を飲み会のネタで終わらせず、政治家、行政側、現場の研究者、ステークスホルダーが一同に介して話し合ってみましょうという、青臭いけど至極真面目な、でもクソ真面目になるわけでもなく、あくまでお祭り気分で一度真剣に考えてみましょうよ、という企画だったと思うのですが(個人の感想です)、イベントが終了して興奮冷めやまぬ2014年の2月のバレンタインの頃。とんでもない事案が持ち上がったのは、多くの方々の記憶にまだ残っていることと思います。twitter係を拝命して以来、情報収集という観点でのSNSのパワーにはただならぬものを感じていたこともあり、個人アカウントでことの成り行きを固唾をのんで見守っていた頃、注目していたのが、動物学特論なるアカウントです。専門的な観点から色々情報を発信されていまして、なるほどふむふむと頷くことしきり。学問的には多くの専門家の方々が懸念した通りになり、言葉を失う悲しい出来事もあってあってあまり振り返りたくもないのですが、動物学特論さんととはそれをきっかけに学会ついでにオフ会したり、DMで実験についてお伺いしたり、するようになりました。
そう。動物学特論さん、筋金入りの生殖工学の専門家なんです。で、iGONADを始めるにあたってとにかくいろいろ情報収集したくて、半分は富山の白エビにつられて、要は押しかけオフ会で、冬の日本海を渡って特論詣でをしました。富山の酒と肴に舌鼓を打ちつつ伺ったのが、マウスを本格的に扱うのであれば、生殖工学の基本的な技術をできるようにしておくと色々便利ですよ、今は昔ほどハードル高くないですよ、熊本のCARDの生殖工学講習会、いってみてはどうですか、泊まり込みで、一通り生殖工学の技術を学ぶことが出来ますよ、楽しいですよ、ということでした。CARD流の精子凍結法は実は動物学特論さんが深く関わって開発されたmethodで、そのことはunderrepresentedなのでもっともっともっと広く知られて良いことだとは思いますが、その飲み会から帰るとすぐにCARDのホームページを開き、早速生殖工学技術研修会の方に申込みました。なんか振り返ってみるときっかけとなった重要なイベントは飲み会のあとのホテルばっかりのような気がします。ともあれ、無事申込みが受理され、新年度の初回の講義を休講にして、思い出の地(話が長くなるのでカット!)熊本へと飛び立ちました。うー、いろいろありすぎてなかなか進まない。(つづく)
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