クマムシが慶應公式グッズ化!

今でこそクマムシはそれなりに知られる生物になってきたが、私がクマムシ研究を始めた頃にはまだまだクマムシと言っても「何それ?」と言われることも多かった。かなりどこにでもいる身近な生き物なのだが、顕微鏡を覗かないと見れないという小ささも相まって、サイエンスコミュニケーションに難しさを感じる場面もしばしばあった。そんなクマムシをもっと身近に感じていただこうと、過去には私の研究室にも在籍されたクマムシ研究者堀川大樹さんが「クマムシさん」というゆるキャラをプロデュースされ、その可愛らしさからぬいぐるみがクレーンゲームの景品として全国展開したこともあった。一方、私はぬいぐるみメーカーTSTアドバンスさんとご縁があり、形態学的にリアルなクマムシぬいぐるみを監修させていただき、陸のクマムシや海のクマムシなど、さまざまな種類のリアルクマムシぬいぐるみを販売いただいている

「さまざまな種類」のクマムシ?と思っていただけたならまずねらい通りである。よく勘違いされることがあるが、クマムシとは特定の生物種を指す言葉ではなく、緩歩動物門という分類群を示す言葉である。門、とは、もちろん門・綱・目・科・属・種のリンネ式生物階級分類の上位階級で、例えば私たちヒトであれば脊索動物門に相当するので、魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類を全て含めるレベルの分類群である。実際、緩歩動物門には約1,500種が記載されており、形態も生息環境も実にさまざまである。海のクマムシには複雑な付属肢(通称:ヒゲやトゲ)を持つものも多いが、それらは基本的に現状飼育ができない。なので、実際にこれらのクマムシを目にすることは相当に難しい(広大な海から、体長0.1mm程度の透明な生物を探し出す苦労を想像してみてください!)。そこでぬいぐるみである。ぬいぐるみであれば、立体的に、これらの魅力的な形態を余すことなく堪能できるのである。おかげさまで、市民公開講座やサイエンスカフェなどに登壇させていただく折に、クマムシとその研究を伝える上で大きな助けになっているし、子供たちがリアルなクマムシに目を輝かせてくれているのを見れるのは研究者冥利に尽きるものである。

『目から鱗』の体験もあった。市民向けサイエンスカフェを開催されている方が、目の不自由な方向けのサイエンスコミュニケーションを試行錯誤される中で、リアルクマムシぬいぐるみを使い、クマムシの魅力や不思議を紹介いただいたところ、さまざまなクマムシをぬいぐるみを触って理解でき、非常に好評だったというのだ。私も普段から学会であれ、公開講座であれ、常々魅力的なスライド作りに力を入れており、プレゼンテーションには最大限の努力をしていると思っていた。しかし、クマムシのように顕微鏡を覗かなければ見えない生物の魅力をそのままでは伝えられない方々のことまで考えが及んでいなかった。素晴らしい試みと、そこでクマムシぬいぐるみを用いるという発想に心より感謝すると共に、このぬいぐるみを監修させていただいて本当によかった、と思えた出来事である。

さて、ここでようやくタイトルの内容に至る。この度、慶應義塾公式グッズとして、ペンマークチャーム付のリアルクマムシぬいぐるみマグネットが販売されることとなった。商品ページにはありがたいことに慶應義塾がプレスリリースをし、多くの反響をいただいた各種研究についてもリンクしていただいている。これからもより多くの方々にクマムシを知っていただき、新しいクマムシの魅力を発見し届けていきたいと思う。

 

 

 

投稿者プロフィール

荒川 和晴
荒川 和晴慶應義塾大学先端生命科学研究所 准教授
《最強生物クマムシ》と《最強素材》クモの糸の解析から「生命とは何か」を解き明かす。