It’s a small world
私はシンガポールのTemasek Lifescience Laboratory(略してTLL)で10年間PIを務めていました。TLLはシンガポール国立大の敷地内に位置し、私はシンガポール大学生物科学科(NUS DBS)の招聘准教授を兼任し、学部生のインターンや卒研生の受け入れ、大学院生への授業も担当していました。私がTLLに在籍していた頃は、Steve CohenやPernille Roth, Mohan Balasubramanian, Karuna Sampath, Fred Berger, Sneshuka Oliferenkoといった著名な基礎研究者たちが活躍していました。私と同じく日本に帰国した伊藤寿朗さん(奈良先)、岡村勝友さん(奈良先)、西井一郎さん(奈良女子大)、茂木文夫さん(北大)たちも、それぞれに活躍されています。もちろん、まだシンガポールで活躍しているGreg JeddやCai Yuたちも親しい友人です。
TLLでの最後の2−3年間は、同じくショウジョウバエ研究者であるJoanne Yewとラボをシェアしていました。分野が異なるため、シンガポールでコラボをしたことはなかったのですが、私と彼女がそれぞれ日本(阪大)とハワイ(ハワイ大マノア校)にジョブを得てから、何度か仕事の話をするうちに、コラボできる可能性を感じ始めました。彼女はハワイ大で微生物叢やフェロモンの研究を展開し、大阪大学で得た国際共同研究のグラントにより、私のラボに参加してくれた須山さんと一緒に、3人で微生物叢による卵形成の促進機構の解析を行いました。その須山さんは、EMBLでの長いポスドク経験を持ち、初めて私たちが出会ったのは台湾の学会でした。まさかその時には一緒に仕事をすることになるとは思ってもみませんでした。最終的にこの研究は、私、須山さん、Joanneの3名の女性が共責任著者となる国際研究論文としてCommunications Biologyに掲載され、ダイバーシティを体現する素晴らしい国際研究になったと感じています。
一方、2023年の分子生物学会で私と廣瀬さんがオーガナイズしたシンポジウムでトークをしてくれたEugeneはシンガポール時代からの友人で、学会で非常に楽しい時間を過ごすことができました。廣瀬さんがスピーカーとしてお呼びしたいと名前を挙げてくれたのですが、彼は私の元同僚・Sneshukaのパートナーで、南洋工科大(NTU)のPIでした。私が日本にジョブを得たほぼ同時期に、彼らはUKでジョブを得たのでした。
アメリカ時代やシンガポール時代の友人たちや元同僚に世界のあちこちで出会うのは楽しく、研究でコラボしたり、気軽にいろんなことを聞いたりと、人生の大きな財産となっています。世界は広いようで狭いものです。人生の一部を共有し、時には悩んだり辛い思いをした時にお茶を飲みながら語り合った友人たちと、遠くからでも支え合い、エールを送り合いながら、同じ時代を生きている気がします。どんなに時が流れても、かつて共に過ごした時間は価値のある宝物となり、研究や人生を支えてくれています。
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