オリンピックを見て思ったこと
本年度から公募班メンバーとして参加しました、大阪大学・生命機能研究科の黒木と申します。
ほ乳類の性決定の仕組みについて、主にエピゲノムや代謝の観点から研究を行っています。
さて、今月は4年に一度のオリンピックがありましたね。皆さんのスポーツ熱は盛り上がったでしょうか? 私は普段はMBLの大谷選手くらいしかチェックしないのですが、オリンピックの時だけは様々な競技に目が離せなくなります。柔道、体操、レスリング etc. 普段目にする機会の少ないスポーツ選手の活躍と連日のメダルラッシュに興奮しました。
しかし、今回のオリンピックで印象に残った種目をひとつ挙げるとすれば、やはり女子ボクシングでしょうか。
Y染色体をもつ性分化疾患の女子選手の活躍が、議論を巻き起こすのを目の当たりにして、生物学的性と社会的性の扱いの難しさを感じました。
性決定の研究をしていると、「メカニズムが分かっても性分化疾患の患者さんを治せるわけでもないし、意味があるんだろうか?」と自問自答することが時々あります(主に申請書の社会的意義の欄を書いてる時)。しかし、今回の騒動で、性分化疾患とトランスジェンダーを混同したり、誤った知識を元に心ない言葉をネットで発信している人がいるのを見ると、研究者として性決定の仕組みを解明し、正しい知識を社会に還元することは、それだけで十分な価値があるんじゃないかと改めて思った次第です。
本領域では、新たに発見した性決定に必須の相分離タンパク質に着目した研究を行っていきます。
社会に広く発信できるような成果をだせるよう頑張りますので、これから2年間どうかよろしくお願いします。
写真はY染色体をもつ性転換メスマウス。ジェノタイピングしてみるまでXYかXYか判別がつきません。
たぶんほ乳類の性は、多くの人がイメージするよりも簡単に揺らぐもののようです。