「似たもの同士」の間にあるものとは?

この度、本研究領域の公募班に採択頂きました熊本大学の高島 謙と申します。生まれも育ちも北海道の生粋の「どさんこ」ですが、学位取得後にアメリカに留学し、昨年春から縁あって熊本にやってきました。北国育ちを圧倒するすさまじい湿度と日差しを前に、とろけそうな日々を送っています。

専門は何かと聞かれると困ってしまうのですが、ウイルス感染に対する自然免疫応答の解析から、研究の世界に足を踏み入れました。留学先は毛色を変え、線虫をモデルに「エピゲノム情報の世代間伝播」という挑戦的なテーマに取り組むGreer labBoston Children’s Hospital)に行ったつもりが、私自身は3年間一度も虫に触れることはなく、「新規エピジェネティクス制御因子のスクリーニング」に一人取り組んでおりました。帰国後は留学先で得られた知見をもとに、現在着目している新たなエピジェネティクス制御因子の生理的な意義について、免疫応答の観点から解析を進めています。

現在の研究ですが、留学先での紆余曲折の中で出会った「ヒストン模倣」という現象に着目しています。その名の通り、ゲノムDNAが巻きついている「ヒストン」を、真似ているかのように振る舞う分子があるのではないか?ということです。私はヒストンを模倣するかのように振る舞う核内分子を発見し、そのエピジェネティクス制御における新たな役割や腫瘍形成における意義を明らかにしてきました。面白いことに、この分子はヒストンN末テールと同様に「決まった構造を取らない」天然変性領域を持つことが判明し、もしかするとヒストンの働きを模倣するのに一役かっているのではないか?と考えています。

「模倣」や「似ている」という概念ですが、よくよく考えると奥深いものです。夏といえば、大学生の頃はソフトテニス部で恐ろしいほど日焼けして練習に明け暮れたものですが(僕は弱かったですが…)、よく先輩方から上手になるには「上手なプレーヤーの真似をするように」言われていたことを思い出します。逆に、強豪校の選手はフォームのみならず、だいたい体格(場合によっては顔すら)も似ていて、なるほどと思ったものでした。一方で、大会で私の「ドッペルゲンガー」がいたと言われ、よくよく話を聞いてみると、メガネをかけて天パ頭、顔までそっくりなのに、テニスは非常に強い(ので私ではないとわかった)ということもありました。また、「類は友を呼ぶ」という言葉があるように、私同様に冴えない後輩達と練習後に夜な夜な飲み屋でつるんでいたことも良き思い出です。要は「似ている」と言っても様々な切り口があるという話なのですが、きっと生体内にも「そっくりさん」がいたり、「似たもの同士つるんでみたり」という分子どうしの社会があるのだろうと想像を膨らませています。

まだまだ未熟な駆け出しの身であり、このような素晴らしい研究班のメンバーに加えて頂くのは大変恐縮ではありますが、たくさんの魅力的な研究に触れて、自分が面白いと思う研究を皆さんと共に発展させていければと思っています。どうぞよろしくお願い致します。

投稿者プロフィール

高島 謙
高島 謙熊本大学大学院生命科学研究部免疫学講座 助教