非ドメイン型ムーンショット
本学術変革のヒアリングを終え、結果待ちの中ぶらりんの期間。ふと思い立って、愛車のアルトくんで海外線をぐるりと回って道内一周をすることにしました。東横インのポイント利用で宿をなんとかしようというケチくさい理由で宿泊地を決めたので、初日は宗谷岬経由で網走まで、二日目は知床半島と根室半島を回って釧路まで、三日目は襟裳岬経由で函館まで、最終日は渡島半島と積丹半島を回って札幌までと、北海道の広さを知らない内地の人がやりがちな無茶苦茶な計画を立ててしまい、留萌を通過した頃は、これからどんだけ走るんだ、なんて馬鹿なことを始めてしまったのだろう、温泉巡りぐらいにしときゃよかった、などとひとりごちていました。でも、どこまでも続く海岸線と次々と変わる雄大な丘陵の景色、たまに飛び出す危ないエゾシカに出くわすうちに、どんどんテンションが上ってきて、ウニ丼カニ丼に舌鼓をうち、念願の野付半島(どこをどうやったらあんな形の半島ができるのだろう)で偶然出会ったサンゴソウの群落に目を見張り、ふと立ち寄った川でサケの大群の遡上に感激し、十勝川河口では季節外れのオジロワシに出会い、積丹半島を回って馴染みの小樽に戻ってきたときは、もう一周してもいいかな、ぐらいな感覚でした。暇つぶしにと持ち込んだCDやラジオも結局一回もつけることなく、ひたすら無心で雄大な景色の中を走りつづけた非日常の4日間。総走行距離2487キロ、平均時速41キロ、平均燃費30.5キロ/L。とても良いリフレッシュになりました。
返ってきてしばらくして、ふと読み返したくなって宇宙兄弟のページを繰っていたら、「38万キロも離れて寂しくはなかったですか」という月に行った宇宙飛行士への質問に「38万キロなんて近所です」と答えるシーンがあって、初めて読んだときはふうんという感じだったのですが、いやちょっとまてよ、北海道一周でも2400キロで、ちょっと頑張ったらすぐ1万キロ、それを38回続けたら軽自動車ですら(距離だけなら)月まで行ける!と考えたら、なんだか夜空に浮かぶ月が急に身近なものに覚えてきました。ましてや使うのは軽自動車ではなくロケットです。距離だけで言えば、決して遠くはない。もちろんそこに行くにはどうやって重力圏外に飛び出すかとか、真空環境でどうやって推進力を得るかとか、そもそも過酷な宇宙環境をどう耐えるのかとか、様々な技術的な障壁はあります。でも、素人目には一番の困難と思われる「距離」自体は、実は全然大した問題ではない。とてつもない夢のようなことも、実は一つ一つ積み重ねていけば実現できる。それがアポロ計画だったのか、と、ケネディーさんと当時の科学者たちの慧眼にあらためてうならされました。
Dobzhanskyの名言に、「進化の視点がなければ、生物学は意味を持たない」という言葉があります。どのようにしてこれだけ多様な生物が進化の過程で生み出されてきたのか。これは生物学者だけでなく万人を長らく魅了してきた大きな謎であるのは間違いないところだと思います。新しい種が生まれた瞬間というのはあるはずなのですが、種が絶滅したという悲しい話は巷にあふれているものの、新しい種が生まれました、なんていうニュースを話す桑子さんにはまだお目にかかれていません。進化というのはとてつもない時間をかけて行われてきたものなので、検証不可能なもの、としたものですが、これだけ様々な技術が使える今日このごろです。とても無理、夢物語と思われたことも、実は問題はそこではない、みたいなこともあるのかもしれません。
今はまだ夜明け前。これから5年間、この領域がどの様に発展していくのかまだ予測も付きませんが、あとから後世の人が振り返ったときに、あれがムーンショットの第一歩だったんだなあと思えるような、そんな素晴らしい発見を生み出すことを目指していきたいと思います。
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