告知「Xの会」2024年9月に開催!

私たちの研究室では、HP1というヘテロクロマチンの主要な構成因子の結合因子をヒトの細胞から網羅的に同定し、その中で未知のタンパク質について機能解析を行っています。しかし、表現型が見えないとそのタンパク質が何をしているのかわからないため、学生さんの努力にもかかわらず、研究の進展が難しいことも多々あります。

そんな中で、私たちがHP1結合因子の一つとして見つけ、「HBiX1」と名付けた因子は、女性の細胞核のみにヘテロクロマチンの構造体として見える不活性X染色体に局在すること、不活性X染色体で働くことが知られているSMCHD1と相互作用することから、HBiX1の表現型は不活性X染色体に着目すれば良いことが、幸運にも研究を始めて比較的早い段階でわかりました。その後の解析により、HBiX1SMCHD1との複合体は、不活性X染色体のクロマチンの凝縮、すなわちヘテロクロマチン化に寄与していることがわかり、2013年に論文として発表することができました。

HP1結合因子であるHBiX1の研究は比較的順調に進んだのではありますが、、、そもそもHP1H3K9me3に結合し、セントロメアやテロメア周辺の構成的ヘテロクロマチン形成に寄与するとされています。一方、不活性X染色体は、H3K27me3を基盤とする発生・分化依存的な遺伝子発現制御に関与する条件的ヘテロクロマチンであり、同じヘテロクロマチンといえどもその両者は全く別物と、世間的にも、私も、思い込んでいました。そんなこともあって、研究開始当初は、私自身はX染色体の不活性化についての知識はゼロ。しかし、研究を少し進めると、不活性X染色体の生物学とそれを支えるメカニズムはとても奥深いことに気がついて興味を持ったことと、自分たちが素人なりに進めている不活性X染色体の仕事に関して相談できたりディスカッションする人を広げたいという下心もあり、何か研究会みたいなことができるといいなと思いました。そこで、不活性X染色体研究の第一人者である佐渡敬さん(当時九大、現在は近大教授)や、何でも詳しい、もちろんX染色体の不活性化にも詳しい木村宏さん(当時阪大、現在は東工大教授)を焚き付けて、国内の不活性X染色体研究やその周辺の研究をしている人たちに声をかけてもらい、20122月に「哺乳類X染色体不活性化についての研究会」を開催することになりました。略して、「X染色体研究会」、通称「Xの会」と呼んでいます。

第一回は、北大で開催することにしました。不活性X染色体研究の国際的な草分けである高木信夫先生が現役時代に北大で研究されていたこと、高木先生にはぜひ会に参加していただきたいという気持ち、また、佐渡さんがスキー好きで、会の後に有志でスキーをすることも、札幌で開催する理由でした。佐渡さん、木村さん、小布施に加え、Edith Heardのところから帰国した岡本さん、増井さん、David Gilbertのところから帰国した平谷さん、Anton Wutzのところから帰国した大畑さんなど、現在活躍している若い研究者の人たちも初期の頃から参加してくれています。

こうして始まった「Xの会」は、30人ほどで、実際に手を動かしている現場の人が現在進行中の話題を提供し、膝を突き合わせていろいろな話ができるいい規模感で、何よりも高木先生の優しい人柄とサイエンスを楽しむ雰囲気が会のコアとなり、この雰囲気が好きな人たちがオーガナイザーを持ち回りして会を重ねてきました。

コロナ禍で休会が続きましたが、この度、平谷さんが発起人となり、平谷研のRawin POONPERMさんがオーガナイズし、また、北大、中川研の栗原さんがローカルオーガナイザーを引き受けてくださり、札幌で久々の「Xの会」を開催することになりました!

この会は、不活性X染色体研究に直接関わっていなくても、分子から細胞、個体に関わらず、また、クロマチン高次構造、ヘテロクロマチン、エピジェネティクス、遺伝子発現制御、核内構造体など、不活性X染色体が関連する広範なバイオロジーのそれぞれに興味があれば楽しめると思います。今回はスキーはできませんが、北海道の良い季節も十分満喫できると思います。興味のある方は、ぜひ、参加してください!

 

第8回X染色体研究会 2024年 9月12日(木)〜9月15日(日)

 

問い合わせ:xmeeting.2024@gmail.com[世話人:ラウィン・プーンパーム/Rawin Poonperm (RIKEN BDR)、平谷伊智朗/Ichiro Hiratani (RIKEN BDR)

 

投稿者プロフィール

小布施力史
小布施力史大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻
ヘテロクロマチン結合タンパク質をとおして、未知のクロマチン機能とそこに潜む仕組みを解明しています。