ヘテロクロマチンの”まあるい”かたち?
この度、公募班にご採択頂きました大阪大学理学研究科生物科学専攻の小布施(おぶせ)と申します。よろしくお願いします。
私たちの研究室では、ヘテロクロマチンに興味を持って、、というか、ヘテロクロマチンの主要な構成タンパク質であるHP1というタンパク質に興味を持って、、というか、このHP1に結合しているタンパク質たちの研究を行っています。なぜ、HP1結合タンパク質かと言いますと、、、学生の頃からDNA複製や染色体分配の研究に携わってきましたが、これらに関わるタンパク質複合体の構成因子の同定を行っているとHP1が含まれているものが少なからずありした。この経験から、きっとHP1にはクロマチンの上で大事な機能をしているタンパク質が他にもいろいろ結合しているのではないか、と考えるようになりました。そこで、自分の研究室を立ち上げにあたって(気づくと、15年も経ってしまった!)、HP1と結合するタンパク質を網羅的に同定して、その中から機能が知られていないタンパク質について、コツコツと機能解析を行ってきました。このHP1に結合するタンパク質の網羅的な同定と、当時機能未知だったいくつかのHP1結合タンパク質の解析を行ってくれたのが、この班に同じく採択されています野澤さんです。こんな感じでで、HP1に結合しているということだけで解析に取り組むので、例えばヘテロクロマチン特有のクロマチン凝縮に関与するものもありますが、あるものはDNA複製、あるものはDNA損傷修復、あるものは分裂期の進行、といったように、それぞれがあちこちのクロマチンの上でのイベントに関わっていることが明らかになってしまいます。というわけで、ヘテロクロマチンの研究をしています!みたいな感じにはならず、掴んだHP1結合タンパク質の赴くがままに振り回されている感じになってしまうのですが、、、それぞれのタンパク質がクロマチンの上でやっている、今まで気がつかなかったクロマチン機能やそのメカニズムがわかったりします。
この領域では、そんなHP1結合タンパク質、なかでも、増量すると何故かヘテロクロマチンの形が変わってしまう因子の機能解析を中心に、取り組みます。ヘテロクロマチンは、例えば不活性X染色体は核膜近傍や核小体にへばりついて”まあるい”構造体を形成しています。また、マウスの細胞で見られる、セントロメア近傍にある巨大なヘテロクロマチンはいくつか集まってクロモセンターという構造体を形成します。クロモセンターもやはり、”まあるい”形をしています。このように、ヘテロクロマチンは多くの場合”まあるい”構造体を作ります。今回取り組むHP1 結合タンパク質をマウスの細胞で増量すると、クロモセンターの”まあるい”形がほどかれて、ひも状に変形してしまいます。どうも、このタンパク質の構造を取らない領域が持つ液–液相分離する性質やRNAとの関係が、このヘテロクロマチンを変形させる活性に大事そうだということで、、この領域に応募させていただきました。採択していただきましてありがとうございます!
困ったことに、このHP1結合タンパク質をノックアウトしたり、増量したりして、クロモセンターの形がすっかり変わってしまっても、細胞はピンピンしているんです。この学術変革領域で研究させていただいて、このHP1結合タンパク質について、「変な能力があるんだけど、何しているのかわからない」、、を脱却して、「こんな大事なことをしているんだ」、、ということがわかればいいなと思っています。また、ヘテロクロマチンが“まあるい”形をしているのには何かしら意味があるのではないかと思うのですが、これも解ればいいなと思いつつ、、皆様のお知恵を拝借しながら、研究を進めていきたいと思っています。また、少しでもこの領域のお役に立てていけたらと思っています。どうぞよろしくお願いします!
洞爺湖をサイロ展望台から望む。いくつかの”まあるい”島と、それらが集まって融合したように見える島が見えます。
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